「メンバーを変えようとしない」チーム形成について 第1回
2019年04月01日
初めまして、コミュニケーショントレーナーの長縄朝と申します。
今月から3回にわたり、「メンバーを変えようとしない」をテーマにコラムを書かせていただきます。
チームを形成する皆さんのヒントになれば幸いです。
若手リーダーからの相談
先日、とある若手リーダーから「チームメンバーをうまく指導するためのコミュニケーション上のポイントを教えていただけませんか」という相談を受けました。
これに対してお伝えしたのが「一度、『指導』という言葉から距離を置いてみて欲しい」ということでした。
指導という言葉が伝えるもの
小さい頃、親から「勉強しなさい」と怒鳴られた経験をお持ちの方は少なくないと思います。
皆さんは、その言葉を受けて、気持ちよく机に向かうことができたでしょうか?
「勉強しなさい」というのも、一つの指導です。
そして指導という言葉の裏には、相手を下に見る、あるいは、相手を「変わらなければいけない存在としてみている」というメッセージが含まれてしまいます。
それはつまり、受けて側に「今の自分のままではいけない」というメッセージを与えてしまっていることになります。
成功している組織の共通点
Google社は2016年に約180の社内のチームを対象に、上手く行っているチームと、そうでないチームの違いを調査し、明らかにしようとしました。
まず「一般的に良いチームの条件」と思われている点、例えば、オフィス外での交流の頻度や、学歴等を調査しましたがいずれも共通点は見られなかったということです。
次に「暗黙のルール」や「行動規準」等も調査したそうですが、この点からも目立ったパターンは抽出されなかったそうです。
そこで、試行錯誤の末にたどり着いた結論が、成功している組織では他者への心遣いや同情、あるいは配慮や共感といった「心理的な安心感(psychological safety)」があるというものでした。
そして、その記事では、他の研究事例として良いチームではチームの一人ひとりがおおよそ「同じくらいの量」の発言をしていることも紹介されていました。
ではこのような「心理的な安心感」はどうやって醸成していけばよいでしょうか。
普段から発する影響を意識する
さて、冒頭の話に戻ります。
そもそもの知識やモラルが不足している等、「指導」が必要な場面はあります。
ただし、常日頃からリーダーが「指導」することにばかり意識を向けているとしたら、それを受けるメンバーはどうでしょうか。
萎縮したり抵抗したり、あるいは「この人には何を言っても無駄・・・」と口を閉ざしてしまうことにもなりかねません。
冒頭の若手リーダーは、萎縮させる方向ではなく、メンバーが安心感を感じながら仕事に向かうことを望んでいるリーダーでした。しかしながら、意欲の高いリーダーは、時にチームをリードする情熱で、周りが見えづらくなってしまうことがあります。
そんな時に自分の行動や言葉が、周りに対してどんな影響を与えているか、一歩立ち止まって見渡してみていただきたいのです。
指導ではなく、サポートする。
教えるではなく、伝える・共感する。
普段の行動の一つひとつが、上から目線ではなく、相手を尊重し寄り添うものであれば、チームの可能性は大きく変わる可能性があります。
どうぞ皆さんも、自分の行動が周りに対して負のメッセージを発信していないか、この機会に見返してみてください。
以上、今回はリーダーの考え方、在り方についてお伝えしました。
次回のコラムではメンバーとの信頼関係の深め方についてNLP実践心理学のエッセンスを交えながらお伝えします。
コラム執筆者
組織の体温を1℃温めるコミュニケーショントレーナー