メンタル不調を予防する、職場環境の把握と改善のコツ
2021年03月24日
私は臨床心理士・公認心理師として、メンタル不調や休職者の方などの相談を受けてきました。職場環境の改善は離職や休職の危険性の予防だけでなく、部下のパフォーマンス向上や健やかで風通しの良い職場づくりにも繋がります。
本コラムではメンタルヘルス対策として、職場環境の把握と改善のコツについてお伝えします。
メンタルヘルス対策として把握しておくべき職場環境
メンタルヘルス対策として考えておきたい職場環境は以下です。
- 仕事の業務量や裁量の度合い、残業の有無や程度
- 職場の人間関係、ハラスメントの有無
- 職場の備品や設備、席の配置
- 職場の温度や湿度、臭い、騒音、照明の明るさ
- イベントや研修、福利厚生 など
以上の項目について、みなさまの職場の状況はいかがでしょうか?
残業や人間関係などは職場のストレスの主要因ともなる重要な項目です。
長時間残業がうつ病などのメンタル不調の発生要因となることは広く知られています。人間関係について、職場で孤立している人は要注意です。気軽に相談できる相手の有無、特に上司との関係性はメンタル不調に大きな影響を与えます。
じわじわとメンタル不調を悪化させる職場環境
一方、先ほど挙げた項目の中には職場の騒音や照明の明るさ、席の配置など、一見メンタル不調に関連の低そうな項目も見られます。
メンタルが健康な状態であれば、気にも留めないことかもしれません。ただ、実際に休職者や職場の悩みを抱えている方の相談を受けていると小さなストレスの積み重ねがメンタル不調の悪化に繋がっていることが見えてきます。
特にメンタル不調に陥っている方、メンタル不調に陥りやすいHSP(Highly Sensitive Person)や発達障害傾向の方などはストレス耐性が低く、じわじわとメンタルヘルスを悪化させていきます。
加えて、人はメンタル不調に陥ると思考がネガティブになり、普段は感じない被害感や自己否定感に苛まれることがあります。
以下は相談者から語られた職場環境への不満の一例です。
- 自分の向かいの男性社員がじろじろとこちらを見てくる(相談者は女性社員) → 生理的に受け付けず、不快
- コロナ対策を徹底しているのに、上司が同僚と一緒に煙草を吸いにいき、マスクを外して談笑している
→ 自分がルールを守っているのが無駄に思える - 支給されるべき文房具が支給されない
→ 自分が軽視されている - 派遣社員として距離をおかれ、会話の輪に入れない
→ 差別されている - ハラスメントと訴えるほどではないけれど、上司や先輩の言動に困っている
→ 大事ではないので相談できないと泣き寝入りする
これらの状態が長引くことで社員は疲弊し、メンタルヘルスが悪化します。被害感や自己否定感が強まり、働く意欲や会社への忠誠心が減退し、パフォーマンスの低下を招きます。
職場環境改善の第一歩は「気づくこと」
管理職が職場環境を改善するための第一歩は、現状を把握し、問題に気づくことです。コツは職場環境改善のための作業を自分一人で行わないことです。理由は2点あります。
一つは、ストレスの感じ方は個人差があるためです。自分自身が問題ないと思っていることに対しても、他者はストレスを感じていることがあります。他者を巻き込み、対策を立てることでズレに気づくことができます。
もう一つは、職場の社員全員で改善に取り組む機会を設けることです。自分たちの職場に対して、自ら改善の手を入れることで、主体性が生まれると同時に、不平不満を抑えやすくなります。
上司・管理職の方にはメンタルヘルス対策の一環として、職場環境の把握と改善に努めていかれることをお勧めします。
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コラム執筆者
ガイアモーレ株式会社 研修講師