コロナ禍とテレワークガイドライン
2021年09月29日
昨年4月の緊急事態宣言以降、それまで在宅勤務やテレワークの制度がなかった企業でも、在宅勤務制度やテレワーク制度を導入した企業も多いのではないでしょうか。
しかし、長引くコロナ禍で、導入時は緊急の必要性に迫られて急遽制度を作ったものの、
改めて制度の内容を見てみると在宅勤務の実態と規程が合っていない、規程に定めるべき
ことが定めておらず使いにくいなどの問題を抱えている企業も散見されます。
厚生労働省は、令和3年3月コロナ禍を踏まえてそれまでのテレワークガイドライン
(以下「ガイドライン」)を改正しました。企業はこれを機会に、改めて自社のテレワーク規程・在宅勤務規程を精査・点検することが求められます。
本コラムではテレワークガイドラインのポイントを解説するとともに、
コロナ禍で起きやすい人事労務に関する基本的な問題についてもあわせて解説します。
テレワークガイドラインの概要
1.導入に際しての留意点
ガイドラインでは、テレワーク導入に際しての留意点として、①テレワークの対象業務
②テレワークの対象者③導入にあたっての望ましい取組について記載されています。
テレワークの対象者については、正規労働者または非正規労働者(有期雇用や時短労働、
派遣労働者など)といった雇用形態の違いによって、対象除外することのないよう留意する必要があります。
ガイドラインでは「テレワーク導入に際しての留意点」となっていますが、既に導入した
企業についてもこの機会に改めて見直すべきポイントであるといえます。
2.労務管理上の留意点
ガイドラインでは労務管理上の留意点として、①テレワークにおける人事評価制度
②テレワークに要する費用負担の取扱い③人材育成についての記載があります。
①人事評価については、職場に出勤していることを人事評価上高く評価することは
テレワークを行おうとすることの妨げとなるものであり、適切な人事評価とは言えないと
されています。また、時間外等のメールについて対応をしなかったことを理由に、
不利益な人事評価とすることも適切とは言えないとされています。
②テレワークに要する費用についても、ガイドラインでは労働者に過度の負担が生じることは望ましくないとされています。
テレワークに関する費用については、よくあるご相談として通勤手当を廃止して、在宅勤務手当を新設するというものがあります。これについては実務上の留意点がありますので、2021年10月22日開催のセミナーで詳しく解説します。
③人材育成の点については、テレワークに必要なスキル等について必要に応じて研修を行うことも有用とされています。
また、テレワークの特性を踏まえると、勤務する時間帯や自らの健康に十分に注意を払いつつ、自律的に業務を遂行できることが求められ、企業は、そのための人材育成に取り組むことが望ましいとされています。
3.テレワークのルール策定と周知
テレワークのルールについて、就業規則等に定め、周知することが望ましいとされています。これについては、ガイドライン上は「望ましい」となっていますが、情報セキュリティに関する服務規律や手当類を定めるのであれば、就業規則等の定めは必須です。
4.様々な労働時間制度の活用、労働時間管理の工夫
テレワークは労働基準法上のすべての労働時間制度で実施可能なものであるため、
テレワーク導入のために今採用している労働時間制度を変える必要はありません。一方で、テレワークを実施しやすくするために労働時間制度を変更することは検討すべきであり、
特にフレックスタイム制はテレワークになじみやすいとされています。
また、労働時間の管理については、本来の職場でないところで労務の提供が行われるため、使用者による現認ができない一方、パソコンのログなどの確認や労働者に始業と終業を
メール等で報告させるなどの方法を取ることが一般的です。また、テレワークは長時間勤務と結びつきやすいため、その点に対する対策も必要です。
5.健康管理、ハラスメント、その他
健康管理について、テレワークでは、上司等が労働者の心身の変調に気づきにくいことから、健康相談体制の整備等の措置を実施することが望ましいとされています。
また、ガイドラインでは、テレワーク中の災害は業務上の災害として労災保険給付の対象となることについても言及があります。
さらに、ハラスメントについても、テレワークの際にもオフィスに出勤する働き方の場合と同様に、その防止対策を十分に講じる必要があるとされています。これについても、2021年10月22日開催のセミナーで、テレワークやオンライン会議特有のハラスメントについて解説いたします。
コロナ禍における人事労務上の諸問題
コロナ禍に特有の人事労務上の問題として、主に①感染に関するもの②ワクチンに関するもの、の2つがあります。
①について、従業員が感染者や濃厚接触者となった場合の取扱いや、感染予防を理由とする行動制限などが問題となります。従業員が感染者や濃厚接触者となった場合については、
その従業員への対応だけでなく、安全配慮義務との関係から他の従業員に対し会社としてなにをしなければならないのかが問題となります。
また、感染予防を理由とする行動制限については、宴会への出席の制限など、私生活上の行動を制限することにつながりますので、どの程度であれば行動制限を許容されるのかがポイントです。
②については、ワクチンを受けた・受けていないことを理由とする不利益取扱いが主なものです。
例えば、ワクチンを受けていないことを理由とした解雇や懲戒は原則無効となるでしょう。ワクチンを接種するかどうかは基本的には個人の自由に委ねられているものであり、かつ、持病等でワクチンを受けたくても受けられないこともあるためです。
他方、ワクチンを受けていないことや受けたことを理由とする配置転換、異動については、少なくとも給与面に変更がない配転であれば使用者の裁量として柔軟に行えると考えられます。
2021年10月22日開催のセミナーでは、テレワークガイドラインの内容を解説し、
テレワーク規程改正のポイントと労務上の諸問題について解説をします。
以上
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- 日程:2021年10月22日(金) 15:00 ~ 17:00
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コラム執筆者
弁護士
松田綜合法律事務所