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人的資本経営とは?取り組み方や背景・実践方法などの事例を解説

2023年06月14日


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人的資本経営とは?

 

人的資本経営に関する取り決めが、日本国内でも急ピッチで進められています。ほんの少し前まで遠い世界の話題だった存在が、今や日本でも大きなトレンドの1つになりました。すでに実践している上場企業は80%を超え、中小企業にとっても“待ったなし”の状況です。

 

ここでは、人的資本経営について基礎知識から取り組み方、注目される背景や実践方法まで必要な情報をまとめました。

 

人的資本経営をわかりやすく解説

人的資本経営とは?“持続的”もキーポイント

人的資本経営とは「人材=資本」として捉える経営のあり方です。「人材=消費される資源」と考える従来の経営では、従業員にはなるべくお金をかけないのが賢いやり方とされていました。

 

人件費削減という名目のもと、苦い思いをしたことがある方も多いでしょう。人的資本経営はこういった経営方法とは真逆の戦略で、資本である人材にもっとお金と時間をかけようと考えます。

 

経営戦略に人材育成を組み込み従業員1人1人の価値を最大限引き出すと、企業全体の価値も高くなります。

 

この試みを長いスパンをかけて実践しよう、というのが人的資本経営のやり方です。“持続的”も重要なキーポイントになります。

 

健康経営も土台の1つ

人的資本経営の土台の1つになるのが、健康経営です。健康経営は、経営戦略の一環として従業員の健康を管理する取り組みです。

 

「人的資本経営=健康経営」ではありませんが、従業員の健康に投資することは人的資本経営の方向性に一致します。実践的な対策になります。

 

人材が重要視される背景

なぜ、人材が重要視されるようになったのでしょうか。いまだにブラック企業が乱立する状況を考えると、あまりにも理想的すぎて「現実的ではない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし、人材に力を注ごうという考えは、国内外で経営のトレンドになっています。

 

◆背景その1:働き方の多様化

 

人材にウェートを置くようになった背景の1つは、働き方の多様化です。転職も当たり前の時代になり、終身雇用や年功序列による囲い込み型の雇用方法も崩れつつあります。

 

これまでの人材管理のやり方では通用しない場面が増えてきた影響も無視できません。

 

◆背景その2:人材不足

 

人材不足も重要なポイントです。人手が足りない状況では従業員の負担が大きくなり、退職者が増える悪循環に陥りがちです。

 

また、優秀な人材は就職より起業の道を選ぶ傾向も強くなり、従来のやり方では能力のある人材を集めにくくなっています。

 

とくに日本は少子高齢化が加速し、総人口はもちろん働き手となる生産年齢人口も減り続けている状況です。人材を平気で使い捨てる、質より量の時代は終わりました。

 

◆背景その3:投資家の判断指標

 

こうした背景が重なり、大企業ほど従業員のスキルや経験に投資する動きが盛んになっています。投資家も、人材投資に力を入れているかどうかを判断指標の1つに加えるようになりました。

 

投資家から高く評価されお金をたくさん集めるためにも、企業が人的資本経営に乗り出す価値が出てきています。

 

従業員エンゲージメントが向上すると・・・

人的資本経営を実践すると、従業員エンゲージメントも向上します。従業員エンゲージメントは従業員と会社の結びつきを指す言葉で、投資家もチェックするポイントです。

 

従業員が会社のことを深く理解し、貢献度が高い状況が理想的とされます。従業員を無理やり酷使するこれまでのやり方でも、一時的に業績は上がるかもしれません。

 

しかしながら、人材は定着せず、何かとトラブルが勃発しがちです。反対に、雇う側と雇われる側がつよく結びつく状況は双方にメリットが多くなります。

 

従業員も自発的に行動するようになり、離職率も下がるはずです。サービスの品質がよくなることで顧客満足度も上がるため、業績アップにもつながるでしょう。

 

従業員エンゲージメントを向上させる戦略としても、人的資本経営は有効な方法です。

 

今までの人材育成とはちがう3つの実践ポイント

経営戦略とリンク

人的資本経営を実践するにあたり大事なポイントになるのが、経営戦略と人事戦略をリンクさせることです。今までも人材育成に力を入れる企業はありました。

 

ただ、人事戦略と経営戦略はちがう部署が担当し、ばらばらに行われるのが常でした。その点、人的資本経営では企業が一丸となるため人事と経営の戦略を連動させます。

 

現状と課題を洗い出し経営課題をはっきりさせた上で必要な人材を雇用し、しかるべきポジションに配置します。

 

経営の音頭をとるため、人事部長や人事責任者とはまた別にCHRO(最高人事責任者)を設置するのが理想的です。CHROは経営の全体像を把握し、経営の視点を人事業務に反映させます。投資家と連絡を取り合うのも大事な仕事です。

 

人材の理想像が変化

従来の人材育成と人的資本経営が大きくちがうのは、人材の理想像です。今までは、真面目で責任感があり、ミスをしない注意深い性格がよしとされてきました。

 

ところがAIがこなせる業務が増え、人工知能には模倣できない能力が重視されるようになります。問題発見力や的確な予測力、革新性といったスキルがあり、自社のニーズにマッチする人材こそ理想像です。

 

人材育成のため長期スパンで計画を立てるところも、即戦力重視の経営戦略にはないやり方になります。

 

政府の取り組み

人的資本経営を導入するときは、政府が発表する実践ポイントと連動させなくてはなりません。なぜなら、人的資本経営は政府が後押しする国ぐるみの経営戦略の一面があるからです。

 

2019年厚生労働省は働き方改革に関連する法案を施工し、働き方を改めることは国内の企業にとって重要な経営課題の1つだと説きます。

 

その流れで経済産業省も2020年に人材版伊藤レポートを公表しました。人的資本経営にどう取り組んでいるのか、情報を開示する重要性を説明する内容です。

 

こういった政府の取り組みが起爆剤になり、各企業が動き始めた事情があります。

 

人的資本経営が日本でも本格始動

情報開示の義務化が決定

アメリカに続き、日本でも人的資本経営に関する取り決めが本格始動しています。2023年にはついに、有価証券報告書に人的資本に関する情報開示の義務付けを発表しました。

 

現段階では上場企業を中心に約4,000社が対象になっていますが、いずれ中小企業も範囲に含まれていくことが予想されます。

 

上場企業の取り組み事例

上場企業が実際に取り組んでいる人的資本経営の事例を紹介しましょう。

 

・丸井ホールディングス株式会社:“手挙げ文化”によって社員1人1人の自主性を促す(最新の手挙げ比率は82%)。個人の中の多様性を引き出すため、職種の変更も推進(77%の従業員が職種変更を経験済)。

 

・花王株式会社:経営戦略と人材開発を密接に連動させるため、経営トップが委員長になり“人材企画委員会”を毎月開催。

 

・アステラス製薬株式会社:One Astellasとなるための具体的な施策として、社長と社員が直接対話する“Dialogue with CEO”や、社員の質問にトップマネジメントやリーダーが答える“Ask Me Anything”などを実施。

 

・SOMPOホールディングス株式会社:各階層向けの研修を積極的に実施し、オンラインで学べる損保ジャパン大学も設立。

 

研修のトレンドはオンライン

SOMPOホールディングスのように、研修に力を入れる企業が急増中です。人的資本経営を進めるためにも、社内教育の徹底は不可欠になりました。研修のあり方も新しくなり、現在のトレンドはオンライン研修です。

 

時間と場所に縛られにくく、コア業務に尽力する時間を確保しつつ効率的に学べるメリットがあります。

 

集合研修とは比べものにならないほどトータルコストも安く、講師に依頼し会場をおさえる必要もありません。準備担当者の負担も激減します。今の時代にマッチした研修方法です。


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コラム執筆者

リスクモンスター株式会社 教育事業担当
リスクモンスター株式会社 教育事業担当

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