いまさら聞けない入管法改正Q&A -パート1-
2019年03月20日
4月にスタートする入管法改正の新ルール。目前にまで迫った今回の改正。
派遣会社はどうすればいい?「知らなかった」じゃもう許されない!?
働き方改革を背景に人材サービス業をとりまく周辺環境が大きな変化の始まりとして、前回は労基法改正について取り上げました。今回取り上げるのは、これも4月に施行される入管法改正。メディア各紙でも取り上げられ、すでにこの言葉を耳にしている人は多いはずです。昨年12月に政府・与党が今国会の最重要法案と位置づけてきた改正出入国管理法が参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決し、成立しました。この法改正は深刻な人手不足に対応するため、2つの在留資格を新設し、外国人労働者の新たな受け入れ団をつくり拡大、その規模は約34万人を想定しているという内容です。技能実習制度に加えて外国人の単純労働分野への受け入れが始まると日本の労働構造だけでなく社会構造にも大きく影響がでてくるという意見も聞かれます。では人材会社はこの改正をどう受け止めればよいのでしょうか。今回はこの原稿を書いている2月16日の時点で明確になっている部分の中からみなさまからの質問の中で多かったものをご紹介します。
入管法改正の概要
Q 改正内容について、わかりやすく教えてください
A 今回の改正法案では2つの在留資格を新設します。一定の技能を持つ人を対象とした「特定技能1号」と、熟練した技能を持つ人が対象の「特定技能2号」です。1号は在留期限が通算5年で、家族帯同を認めません。2号は配偶者と子供の帯同も可能で、条件を満たせば永住することができます。
上記の在留資格をもった外国人労働者は「受け入れ機関」が就労管理します。
出典資料:法務省入国管理局
受け入れ機関
Q 受け入れ機関について、わかりやすく教えてください
A 特定技能労働者を受け入れる機関は「登録支援機関」と「特定技能所属機関」の2つです。
登録支援機関とは
外国人材を受け入れる企業(特定技能所属機関)に代わって、支援計画の作成や、特定技能1号として働く外国人労働者の活動を安定的・円滑に行うことを支援する機関です。
(以下法務省関連資料の原文)
【登録支援機関とは】
登録支援機関は、受入れ機関との支援委託契約により、1号特定技能外国人支援計画に基づく支援の全部の実施を行う。
- 登録支援機関になるためには、出入国在留管理庁長官の登録を受ける必要がある。
- 登録を受けた機関は、登録支援機関登録簿に登録され、出入国在留管理庁ホームページに掲載される。
- 登録の期間は5年間であり、更新が必要である。
- 登録支援機関は、出入国在留管理庁長官に対し、定期又は随時の各種届出を行う必要がある。
特定技能所属機関とは
外国人材と雇用契約を結ぶ企業です。日本人と同等額以上の報酬を支払うことが定められています。原則として直接雇用することが想定されていますが、業種や分野によっては労働者派遣契約の形態も可能とされています。
(以下法務省関連資料の原文)
【特定技能所属機関とは】
- 受入れ機関が外国人を受け入れるための基準
① 外国人と結ぶ雇用契約が適切(例:報酬額が日本人と同等以上)
② 機関自体が適切(例:5年以内に出入国・労働法令違反がない)
③ 外国人を支援する体制あり(例:外国人が理解できる言語で支援できる)
④ 外国人を支援する計画が適切(例:生活オリエンテーション等を含む) - 受入れ機関の義務
① 外国人と結んだ雇用契約を確実に履行(例:報酬を適切に支払う)
② 外国人への支援を適切に実施
→ 支援については、登録支援機関に委託も可。全部委託すれば1③も満たす。
③ 出入国在留管理庁への各種届出
※上記事項を適正に運用しないと出入国在留管理庁から指導,改善命令等を受けることがあり事業停止処分になる場合もある。
出典資料:法務省入国管理局
今回のポイント
- 今回の入管法の改正は施行後に政省令で詳細を決めて行くので、これから明確化していく登録支援団体の詳細要件や対象となる受け入れ業種の試験日など随時、注目していかなければならない。
- 今回の改正で受け入れる外国人労働者のほとんどは一定の技能を有するレベルの就労資格、特定技能1級。現行の外国人労働政策である技能実習制度と留学生のアルバイトに上乗せされるイメージ。
- 現時点で漁業と農業は外国人の派遣が可能に。2019年度中に他の業種の派遣取扱も期待したい。
4月1日施行に向けて続々と公的機関や都道府県で今回の在留資格の説明会が開催されます。
足を運んで勉強しましょう!
用語解説
「入管法」…出入国管理及び難民認定法の略称で入国・出国、外国人の在留資格、不法入国などに関する法律。
1951年にポツダム命令に基づいて制定された政令で、その翌年「ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律」の発令により、以降は法律としての効力を持つようになる。施行以来、社会情勢に変化に対応するため、数回にわたり改正がおこなわれています。1982年の改正では、それまで地位が明確になっていなかった「戦前から日本に住んでいる韓国・朝鮮・台湾人」の特例永住権が認められた。それ以降、1980年代後半から1990年にかけては、不法入国者や不法就労者が増加し外国人による犯罪発生率が増加するなど社会問題視され、在留資格の厳格化と不法就労者の雇用主への厳罰化が進められる形となった。2009年、在留カード交付が開始されるなど、同法の改正は2000年以降も複数回おこなわれている。