改正派遣法に関する 派遣会社の悩み・質問 1
2020年04月22日
最近は新型コロナウイルスの対応に追われ、日本中、いや世界中が混乱している状況かと思います。 このコラムを読んで頂いている頃には、すっかり平常に戻っていることを心より願っています。 4/1現在、当社(エンチカ)でもこの新型コロナウイルス感染症に関する対策をとっており、一部ご紹介させていただきます。
- 外出後の手洗い・うがい:言うまでもないですね。
- 時差出勤:出来る限り通勤ラッシュ時を避けて出勤しています。
- 在宅勤務:業務を見直し、全員ができる限り出社しないように在宅勤務を推奨しています。
- 毎日の検温:37.5℃以上の熱があるようであれば出勤しないことにしています。
- WEB会議の依頼:社内外問わず、打ち合わせを原則WEB会議にしました。
体調は自分自身が気をつけなければいけないことですが、体調不良になったときに従業員が遠慮なく休むことができる環境をどう構築するかというのを、経営者としてもっと検討していかなければならないと感じました。当社は、社内の働き方を見直していくことで、お客様により良い提案ができるようにしていきます。
また、雇用調整助成金については新型コロナウイルス感染症による特例措置がでています。最低限下記のホームページは確認して最新の情報をキャッチアップしておきます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html
さて、今回のテーマは「改正派遣法について相談がある派遣会社の悩み・質問」です。
このコラムを書いているのが3月も終わりなので、いよいよ来週には改正派遣法が施行されようとしております。そこでよく頂いている相談をまとめました。ご参考になれば幸いです。
Q1 派遣社員の時給を基本給と交通費に分解して支給することの是非は?
一般事務で72円の交通費を加えて計算した基本給が1,300円になった。
現在は交通費を支給はしていないが、1,400円支払っているので1,400円から72円を引いた1,328円を基本給とし、別途実費相当分の通勤費を支払うこととしたいが、問題はないか?
A1
労使協定方式に関するQ&A【第2集】 令和元年 11 月1日公表においては、「通勤手当等を支給する一方で、基本給を引き下げ、派遣労働者の賃金の総額を実質的に引き下げることは、改正労働者派遣法の目的に照らして問題であること」と記述があります。これは、基本給を下げることで、割増賃金の基礎となる賃金が下がり、実質的には不利益が生じることからと考えられます。
ただちに違法となるものではありませんが、実質的な不利益変更となればそのプロセスを踏む必要があり、また、紛争等のトラブルが生じるリスクを抱えるといった問題が想定されます。
Q2 「業務に伴う責任の程度」の記載方法は?
労働者派遣契約書に「業務に伴う責任の程度」を記載することになったが、どういった内容を記載すればいいのか?
A2
業務取扱要領では、以下のとおりの記述があります。
- 派遣労働者が従事する業務に伴って行使するものとして付与されている権限の範囲・程度等をいうこと。
- チームリーダー、副リーダー等の役職を有する派遣労働者であればその具体的な役職を、役職を有さない派遣労働者であればその旨を記載することで足りるが、派遣元事業主と派遣先との間で、派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度について共通認識を持つことができるよう、より具体的に記載することが望ましい。
これを踏まえた上で、局長通達の統計表にある「能力・経験調整指数」を職務レベルに置き換えた場合、一番易しい職務レベルのスタッフであれば、「派遣先の指揮命令の範囲内の責任」、もう1ランク上だと「派遣先における社内的な連絡、調整を行う程度の責任」、さらに上のランクだと「派遣先の社内、顧客等の社外窓口、クレーム対応等を伴う程度の責任」等といった内容が一例として考えられます。
Q3 無期雇用派遣社員等に対する雇入れ時の労働条件の明示の範囲は?
派遣元は、派遣労働者の雇入れ時、あらかじめ、労働条件に関する次の事項
① 昇給の有無
② 退職手当の有無
③ 賞与の有無
④ 労使協定の対象となる派遣労働者であるか否か (対象である場合には、労使協定の有効期間の終期)
⑤ 派遣労働者から申出を受けた苦情の処理に関する事項を明示しなければならない
とあるが、すでに雇用している無期雇用の派遣社員等に対しても明示をしなければいけないのか?
A3
すでに雇用している派遣社員については雇入れ時の明示は不要ですが、派遣時には、次の事項
① 賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金を除く。)の決定等に関する事項
② 休暇に関する事項
③ 昇給の有無
④ 退職手当の有無
⑤ 賞与の有無
⑥ 労使協定の対象となる派遣労働者であるか否か (対象である場合には、労使協定の有効期間の終期)
を明示しなければなりません。
ただし、労使協定対象の派遣社員の場合は、⑥の労使協定の対象となる派遣労働者であるか否か (対象である場合には、労使協定の有効期間の終期)のみの明示で良いことになっています。
Q4 退職金制度導入における高卒の参考データの活用の是非は?
退職手当制度を導入するにあたり、当社の派遣労働者の最終学歴を集計した結果、高校卒が最も多い等の客観的なデータがあれば、大学卒ではなく高校卒のデータを比較対象にした制度とすることも可能か?
A4
どのような退職金制度を設計するかは、会社の裁量に委ねられており、十分な説明ができる合理的な理由をもって労使で合意ができるようであれば可能になると思われます。一方、仮に現状大卒者がゼロの場合でも、将来大卒者が入社、就業することが想定されるのであれば、高卒者と大卒者に分けるか、分けないのであれば大卒者のデータを比較対象とした制度にした方が説明はしやすいと思われます。
今回はここまでとなります。次回は、交通費、労働者代表、についてお伝えします。